前夜
真夜中突然目が覚めて
頭ではまだ昨日になりきらない今日の
「水着を洗わなければ」
体はふとんの中でサナギになっているというのに
こうなると
矢も盾もたまらない
半身幼虫のままはいだして
お風呂場でじゃぶじゃぶやっている
半身の幼虫は苦しい
あしたは成虫になる日かもしれないのに
それでも
今
水着を洗わなければ
永遠にあしたはやってこない気がして
丹念に丹念に
カルキを洗い流している
こんな中途半端な時間に
中途半端かどうかも分からないことに
めまいを覚えながら
かたかた脱水機の底に
へばりついた水着とぼうしと髪どめゴムを
苦労してひろいあつめ
干し終えてほっとする
よるのかぜ
ほしのうみ
ああ まだ大丈夫だったんだ
船を降りて
もう一度最初からサナギをすることになるが
中途半端な時間のおかげで
あしたがくることだけは
間違いなさそうだから
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