おやすみ



時計の針が 止まっても
間違いなく 夜は明けていく
いつか必ず来る朝ならば
闇の長さを目盛りに置いて
数えるなんて 無駄なこと
ただ夜の糸がほどけるまで
すべて忘れて 眠ろう

 おやすみ おやすみ おやすみ わたし
 あの日 眠りの中だけが
 あなたの救いの場所だったように
 今は ほかのなにものも
 あなたのことを 救えない

目覚めるのは 明日 それとも 百年先
時の観念 とびこえて
傷の痛みが癒えるまで
螺旋階段ひとつ のぼるまで

西の窓から 覗いてる
それは二十日過ぎの 満ちゆく月



1995


TOP |