遺跡



思い出せないもの
思い出したくないもの
忘れたまま 手をふれずに
何も口にしないで
それは ただ 風化を待っていたもの

からんだ記憶の糸にひかれて
突然に現れた夜
眠れないまま 探しにいく
深く埋もれた 死んだ遺跡

手探りで 砂をかきわけ
傷を承知で
今も血を流す 傷を承知で

深く沈んだ 遠い遺跡のそばで
そのまま 化石になろう と

うずくまっている

おのれの思いの彼方にあるもの



1995


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