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初めて漕ぎ出した海で
たったひとつの味方は
掌だった
何もかも自分に属さないものばかり
自分の存在すら疑わしい
そんな時 そっとひらいてはながめた

初めて踏み出した道で
たったひとつの味方は
やはり掌だった
雑踏と喧騒に押しつぶされ
声を上げることもできない
そんな時 そっとひらいて頬に当てた

あんなたくさんの息苦しい世界を
どうやってここまで泳ぎきっただろう
それはすっかり思い出せないけれど
生まれて初めて出会った世界で
あなたが不安げに 無意識に
ひらいた掌を見て
わたしははっと思い出したのだ

信じていい
あなたにはあなたの
たしかなちからがある
味方はいつもそこにある

いつのまにかわすれていた
たいせつなたからもの
わたしにもまだ残っていることを
信じていたい
たなごころの魔法