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時の雫



時の雫に照らされて
今夜 あの日のあなたに会いにいく
ぽとり ひとしずく受けるたび
ぽとり 痛みのかけらがよみがえる

割れたガラスの破片のような
脆く美しいかけらたち
こころの裏庭に投げ出され
時の雫に侵蝕され
とがっていることも忘れられ

うつむいたままの宿根草が
時の重みに耐えかねている

もう終わりにしなければ。
月の出ない今夜

時の雫は髪の先までしみとおる
その細胞のいろを変えてしまうくらいに
淡く 寂しく いとおしく

あの日のあなたのことば受けとめる
変わることのないあの目のいろを
淡く 寂しく いとおしく