スコーンと楓の実 焼きたてのスコーン 並べた網のすきまに いがいが転がる楓の実は やわらかな秋の午後の日差しを受けて いかめしいその顔を和らげる ひとりぼっちの楓の実を そっと指の先でつまんで どんぐりのお皿に載せてやった ひしめくどんぐりの山のてっぺんで 小さくなった楓の実 焼きたてのスコーンは秋の色 ほかほか流れる金色の湯気は どんぐりのお皿の上を漂い どんぐりたちと楓の実をうっとりさせる この甘美な瞬間を共有する幸せ そうして私たちはいただく 秋の恵みの 秋のあたたかさを 深い紅茶色が 内臓の奥の奥までしみわたる どんぐりが染まり 楓の実が染まり 私が染まる 秋の色 |