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親子清掃にて



魔女が乗っても飛べないだろう重さの
おばけデッキブラシをひきずって
きみは歩く、長い秋の影を落として

重さだけをひきずって歩いているのか
土砂を掃いてならしているのか
そのどちらともとれない姿で
雨あがりの校庭を
ふらふらと
きみは

終了のチャイムの音に くるりと向きを変え
倉庫へと戻る後ろ姿
ひきずった重いしっぽも連なって弧を描き
雨にならされた校庭に
新しい道を作っていく
ふらふらと くねくねと
その頼りない轍の上 傾いた陽が遠慮がちに降り注ぎ
湿ったやわらかな風が吹き抜ける
どんどん小さくなる背中の向こう
すじ雲の空と 雲梯

生きる道すじは、たぶんこんなもので
背中を見送るのも、きっとこんなふうで
おぼつかない足取りと曲がりくねった道に目は離せず
けれど行き着く先は 彼方に確かにあり
この風と空とお日さまを頼みながら
きみが刻む軌跡を見守ることだけが わたしにできること

秋の光とわたしだけが見ていた
きみの轍のゆくえ