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夏の音



蝉の声 かすかに
浅い眠りの底で 絶え間なく

水道管を走る水の音
隣のおじいさんの水やり

行き違う車がゆっくり走り抜けてゆく
灼けたアスファルトの上

耳元の
近く遠い世界を聞きながら
私はどこにいるのだろう
今まで生きた夏の音が
遠く近く耳元に押し寄せる

 小学生の夏 絵日記を描くわたし
 色鉛筆がノートをすべる音
 中学生の夏 体操服のわたし
 ぽんぽんと膝でカバンを蹴る音
 高校生の夏 ギターを抱えたわたし
 暑い教室に響くたくさんのギター
 コードのまじりあう不思議な音楽
 ・・・・・

病んでたゆたう音の海には
何の境界もなく
障子の向こうの白い夏だけが
すべてを抱いて そこに広がる