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転げ落ちた窓を拾い
壁に掲げて のぞきこめば
並ぶ人・人・人の顔
どれも知らない顔
どれも昔から知っている顔
または、知っていたけれど忘れた顔
よじれたりのびたりうすれたり
飽かずながめているまに
窓が転げ落ちた
今日のサーカスはお仕舞い

いつの頃からか
目覚めてまず窓を拾うことが日課になった
そうしてていねいに壁に掲げ
のぞきこむ
並ぶ目が話しかけてきても
それに答えてはいけない
それがこのサーカスの決まりごと
そのうちまた窓が転げ落ちる
もうそんな時刻と
ため息とともに目を閉じる

今日も転げ落ちた窓を拾い
壁に掲げて のぞきこむ
流れゆくもの留まるもの
手の届かないサーカスの翳は
わたくしの日々の全て