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秋の夜


不揃いなパズルのピースのような
南瓜の面取りあとのかけらたち
かきあつめたそれはことばのよう
どう組み合わせて どう並べれば
この心を 微かな痛みを 表せるだろうか

熱のこもった台所を離れ
夜気に当たってひとつ息をつく
つめたい十五夜の月の光と
秋の終わりのしずかな風が
ことばにならないうずきを
さやさやと優しく 撫でていく

草むらから高らかに
こおろぎが鳴きつづけている
ささくれ立った心をなだめるように
自分に攻め入るその心を
やわらかく押し戻すように鳴きつづけている

月の光と 風と
こおろぎの声
しんしんと 心をとおりぬけてゆく