手 熱くねむるちいさな手をとった しわだらけのざらざらしたこの手に 思いがけず胸がつまる いつの間にやら こんなに年を取ってしまった かさかさと細かいしわ 角質だらけの指先 気付けば恨み続けた母そっくりの手は 親不孝なささくれを十も持っている あの日 病院で意識のない私を見ていた母も こんな手をしていたのだろうか そして 同じことを思っただろうか ちいさな手に 涙が落ちるかとうつむいた時 荒れたこの手の赤みが目についた ほのかに赤く かすかに色づき それは確かに 脈打ついのちとちからとあと少しの若さだった 熱いちいさな手を守りゆくために与えられたものを 荒れた両の掌いっぱい抱きしめた 規則正しい秒針が 力強く響く 静かな夜 ひとり |