「時を重ねる」 ――― あと(あ)がき




この物語は、昨冬、「雑木林のペンペン草」さんで催された、
クリスマス限定サイトに寄稿させていただいたものです。
何か、クリスマスにちなんだテーマで…と考えた時に、ふと浮かんだのは、
いつもシーズンが来ると思い出す、あるクリスマスのこと。
そんなおはなしを、つらつらと書きつらねました。
そのうち、れいのごとく、おはなしは私の意図を超えて、
どこかへめくらめっぽう、勝手に転がりはじめるのです。

どうしてこういった構成にしたのか…今ではすっかり思い出せないのですが、
私の中では、「リンクしていく物語」というテーマがもうひとつ、
あったように思います。
時間が移行する、登場人物が入れ替わる、場面ががらりと変わる、
そういった大なり小なりの変化の連なりが物語となっていくのですが、
その変化の中にありながら、どこかがリンクしている物語、というものを、
書いてみたいと思ったのでした。
そう…時は留まることを知らず、
ただ一方向を目指して流れつづけていくのだから、
立ち止まり、振り返り、それでもまた前を向いて、
人は、進んでいくしかない。
そんな、小さな小川のように寄る辺なく生きている中で、
何か動かないものを、見つけてみたかったのかもしれません。

過去と、未来と、誰かと。
つながる、ということの不思議さに打たれつつ、今日もこうして、
キーをたたいています。
自分の中の時だけは、時折、留めながら。
記憶のもつせつなさに泳ぐ時、私は私の中の、深い湖に出会う。
時を重ねながら、ひたひたと迫る波のようなせつなさを、
これからもその底にゆっくりと降り積もらせて、生きていくのでしょう。


余談ですが、ここには、懐かしいふるさとの光景が埋められています。
読み返せば、まぶたの裏に、鮮やかに。
今のあのまちでない、あの日の、あのまちの風景。

この作品を書く、大きなきっかけをくれたなずなさんに、
心から、深い感謝をこめて。

メリー・クリスマス!

                               (2003.12.24)






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