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誕生日 9/21

小さい坊ちゃん、今日で18歳になりました。
もう、「小さい坊」ではありませんが。。
見た目はともかく、大きい坊ちゃんとともに、相変わらずの面白さです。
二人の話題はたいてい、ウルトラマンや怪獣やプロ野球のことで、
小学生の頃と、たいして変わらないような…。

晩ごはんの準備をしていたら、大きい坊ちゃんがしみじみと、
「小学生の時はなー、じゅんも、いじゅの誕生日がすごく楽しみやった。」と言うのです。
「家族の誕生日がしばらくなくて、最初にいじゅの誕生日があるやん。
 わくわくして、いじゅが一番やけど、その次に大きいハンバーグはじゅんがほしいなとか、
 ケーキも、いじゅの次に大きいところがほしいなーって思ってた。」
それを聞いて、そういえばそんなふうだった、その頃の大きい坊ちゃんを思い出して、
懐かしく、そしてとても愛おしく思いました。
でも、小さかった頃の自分の気持ちを思い出して語る今の大きい坊ちゃんのことも、
同時にとても可愛らしく、人間らしく思えました。
「今は、そんなことは思わへん」そうですが…(笑)それはそれで、寂しいような。
そんな大きい坊ちゃんも、再来月には、20歳の誕生日を迎えます。
「この家に、だんだん子どもがおらへんようになるなー」と言いながら、
まったくそんなことを感じさせない、彼らふたりなのでした。



最後の文化祭 9/14

9月2週めの週末、小さい坊ちゃんの高校の文化祭に出かけてきました。
校内発表の金曜日には大きい坊と、一般公開日の土曜日にはオットーと、
それぞれの都合でばらばらにでしたが、家族全員が坊ちゃんのがんばりを見届けました。

夏休み前から準備に入り、夏休みはぼちぼちと受験勉強と二本立てで、
休み明けからは集中してクラス全員で仕上げていった、オリジナル劇の発表でした。

発表場所は、教室。
文化祭劇といえば、体育館などの舞台で演じられるような印象が強いのですが、
小さい坊ちゃんの学校では、劇をするクラスは、自分たちの教室で。
唯一、音楽科のクラスだけは、音楽ホールがあるため、
そこでミュージカルを上演するのが常です。(こちらはかなり本格的で、注目度も高い)
教室という限られた空間で、暗幕を張りめぐらし、70人前後が入る観客席を組み、
禁止されている部分には舞台装置を貼ったり吊ったりしないよう気を付けながら、
アイデアを出しあって作られた舞台は、さながら芝居小屋のよう。
身を乗りだすようにして観ている観客の熱気と、汗びっしょりの演者とのあいだで、
目には見えない、確かなやりとりがあるのを感じながら、最後まで引きこまれて観ていました。
その場にものすごい「熱」が生まれ、エネルギーが交流しているのを感じた40分でした。
そう…たった40分!
そんな短い時間で、登場人物たちの人生に、運命に、目も心も奪われ、胸揺さぶられ、
その時代に演者とともに、教室ごとタイムスリップしたかのようでした。
終幕は、滂沱の涙。
けれど悲しいだけではない、悲劇のなかに垣間見える希望と、純粋な決意とが、
まっすぐ観客の胸にささったがゆえに流れた、せつなく、不思議な涙でした。

時は、昭和18年。
文科系学生の徴兵猶予が解除され、最初の出陣学徒壮行会が行われた秋から始まる物語。
文科系の学生である青年と、彼を慕う女学生、
理工系の学生である青年と、彼を慕う女学生。
それぞれの思いを抱きつつ、それぞれが抗うことのできない時代の波にのまれ、
やがて終戦とともに、思いがけない、悲しい結末を迎える。
そんな物語でした。
悲しいのだけれど…そこに希望がかすかに光り、その希望を生きる決意を、
演者と一体となった観客までが、ともに決意するような、そんな力強いラストシーンでした。
時代に翻弄された登場人物たちの年齢が演者と変わらないことも、
架空のこの物語が生々しい現実であることを感じさせ、胸がつまりました。

戦後、出兵した文系大学生の一部が帰ってまいりました。
文科系高等教育を受けた彼らは、日本という、一つの国の新しい体制を作るのに尽力しました。
武力とは関係のない国の運営には彼らの力が必須でありました。
・・・訳も分からず、戦争によって青春と家族と居場所まで失った彼ら、その反動には強い平和への希求と繁栄の念が含まれており、現在の日本の礎を作ったのでありました。

多大な損失から国の責任までを背負った彼ら、そんな彼らが作り直した国、日本。
彼らの神髄は今でも生きているでしょうか?

最後のナレーションにさまざまな思いが去来し、また涙が流れました。
(昭和〜平成の総理大臣3名が、文科系学生の復員兵であったことも、後に知りました。)

「台本」という平面上の物語を、クラス全員で協力して肉づけし、立体化していった過程には、
偶然とは思えないような符合や流れがいろいろあり、坊ちゃんから話を聞くほどに、
見えないちからが何か後押ししているようで、鳥肌が立ちました。
そんな見えない応援があってもおかしくないと思える、彼らの純粋さと集中力に、
観客もみな、物語の枠を超えて心を打たれたのでしょう。

発表が終わった夕方、大道具を壊し、たった2時間でいつもの教室に戻った、と。
それはとてもあっけなく、少し寂しかったようでした。

保護者のひいき目でなく、クラス劇のレベルを超えた完成度の高い、素晴らしい演劇でした。
何より、作り上げたクラスのみんなの充実感、達成感はものすごかったようで、
「これで文化祭の大賞(学校全体で選ばれる)じゃなかったら、そんな賞要らんわ!」というくらい。
そして、学校祭の終わりに、例年の有力候補の音楽科をおさえ、みごと大賞を受賞したのです!
彼らひとりひとりのがんばりに、拍手を送りたい気持ちになりました。

クラスの絆も深まり、皆が文化祭の余韻に浸っているようです。
坊ちゃん、、、高校最後の文化祭で、最高の思い出ができて、よかったね。
わたしもまた、坊ちゃんの青春のひとこまをのぞき見させてもらって、
うれしい気持ちのおすそわけももらって、胸がいっぱいです。