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ハロウィーン  10/31



ひるがのの牧歌の里で、坊っちゃんたちが描いた、かぼちゃの顔。
ずっとテーブルに飾っていました。
今年のひるがのでの思い出、いっぱい抱いているかぼちゃたち。



からっぽ  10/7


クワタンとかぶこを山に帰す旅から戻り、飼育ケースを洗ったら、
ケースと同じように、わたしの心も空っぽになってしまった。
玄関にケースがなく、ケースの中にもなにもなく…
かぶこが死んでしまった時よりも、こうして「いない」ことを実感することで、
喪失感が大きくふくらんできて…
さびしい。

そして、まさか幼虫がいるとは思わなかったため、下調べが不充分で…
幼虫が腐葉土を食べて育つことは分かっていたのだけれど、
松の木の下に埋めてきてしまったことを、ひどく後悔している。
腐葉土に針葉樹が混ざるとよくないらしい。
幼虫の周辺には、持っていったマットを埋めるようにしてきたけれど、
食べつくした時は、どうなるんだろう。。
心配で心配で…せっかくのかぶこの残した命なのに。と。
図書館でカブトムシの図鑑を借りてきたら、やはり、あれはカブトムシの幼虫のようで。。
もう、大きく元気に育つことを、祈るしかないのだけれど。
本当に、祈っています。
元気で、元気で。きっと、また会おうね。



かぶこのプレゼント  10/6


クワタンが死んでしまった1ヶ月前から、我が家では、
「ふたりとも、ひるがのに帰してあげよう」という話がまとまっていました。
今週末は3連休…天気予報とと予定とをながめて悩み、、、
結局、お天気がいちばんよさそうなのは明日だ!と結論を出し、
午前中の用事が終わって午後から、ひるがのを目指しました。
冷凍庫に眠っていたクワタンを連れて、かぶこは死んだ時のまま、飼育ケースに入れて。


夏休み、泊まったホテルの裏側、バーベキュー施設のあるお庭。
この上はだだっぴろいキャンプファイヤー場になっていて、その奥はずっと、森林になっています。
(満天の星を見たのはこの広場で、その時はキャンプファイヤー場とは分からなかったくらいに真っ暗でした)
クワタンは、ホテルの明かり目指して飛んできたのだから、
この林の中に埋めてあげよう…と決めていました。
木の根元を掘って、坊っちゃんたちが代わる代わるクワタンを手にして、
「ありがとう」と「さよなら」を言いました。
クワタン…短い命を、わたしたちのもとで過ごしてくれて、ほんとにありがとう。

ホテルの周辺は、木々も葉っぱも花も、すっかり秋でした。
肌寒いくらいの澄んだ空気の中で、落ちているいが栗をつついたり、大きなきのこを見つけたり。
しばらく遊んだあと、かぶこのふるさと、「まきばの森」へ移動しました。

「まきばの森」にも秋が訪れていました。
落ちたばかりらしい、きれいなたくさんのどんぐり。冷たい風。遠く揺れるすすきの穂…
けれど、かぶこをつかまえた「樹液のいずみ」の木にたどりつくと、
驚いたことに、あの日と同じようにたくさんの虫たちが集まっていたのです。
夏のようにはあふれていないけれど、この木は、生命を育む木なんだなあ…
そんなことを思い、樹液があふれているポイントをぐるりとながめて、どきり。
スズメバチ…
こんな間近で見たのは初めて。
この木の根元に埋めてあげる計画は、変更せざるをえませんでした。
スズメバチを刺激するのは避けなければ。。
そこでその木の向かい側、ほどほど木陰があり、落ち葉が積もっているところに場所を変えました。
土を掘り、クワタンと同じようにかぶこにありがとうを言って。
かぶこのおうちだった、昆虫マットごと、一緒に埋めてあげようとケースをひっくり返したら、、、
透明のケースに、何かがくっついている。
・・・・・表からは、見えない。でも・・・
「・・・・・幼虫やで」
「・・・・・幼虫や!」
オットーはプラスチックの小さなスプーンで、そっと固い土を崩していく。
そこには…なんと、大きさ3cmほどの、小さな、でもある程度成長した、幼虫が動いていたのです!!
「!!!!!」


カブトムシのメスは、捕まえた時には交尾が済んでいる場合が多い、とどこかで読んだけれど、
まさか、捕まえて2ヶ月も経ってから、こんなことがあるなんて思いもしなかった。
9月4日、1ヶ月前に、一度マットを全部交換しているのです。
古いマットの中に、卵を見つけることはできなくて。。
もう、かぶこは子どもを産むことなく、死んでしまうんだ。。と、
かぶこの命を次につないでやれなかったことが、最大の後悔だっただけに、
胸がいっぱいになりました。

実は数日前に、米粒のような楕円形の白い、明らかに土とは違うものを採取していたのですが、
まさか、卵?と思いながら、半信半疑でした。
それも、マットと、幼虫とともに、かぶこの近くに埋めました。

わたしの命を受け継いだ赤ちゃんが、ちゃんと育っているよ、と、最後に教えてくれた、かぶこ。
ことばの使えないかぶこからの、ことばよりもはっきりとした、確かなプレゼントとメッセージだった。
ありがとう、ありがとう、かぶこ。
わたしたち家族に、たくさんの贈り物を、ありがとう。



さよなら、かぶこ  10/5


さよなら、かぶこ。
つかまえた日からちょうど2ヶ月を迎えた今日、かぶこは天に召されていきました。

急に気温が下がった先週末。
暑い夏の名残を経て、一気に秋を迎えた10月。
かぶこの元気も一気になくなったようで、すっかり「おばあさん」の様相でした。
薄い羽を広げて飛びたつことはもうなく、ゆっくりとした動作で移動し、食べるえさの量も減りました。
そのうち、土に中途半端にもぐるようになって…
思えば、ここ2〜3日、土に入っているようで、背中やおしりだけ出していたのは、
もうじょうずに足で土を蹴ることができなくなっていたのでしょう。

夕べ遅く、かぶこを見ていたら、いちばん後ろの右足が土を蹴れずに空を蹴っていることに気付きました。
足の向きが、おかしいのです。左は土を蹴っているのに、右足は上を向いている…
オットーを呼んでそのことを説明すると、しばらく観察した後、
「その前の足は、もう神経が通ってないんちゃうか?動いてないで」というのです。
よくよく見れば、上向きにしか動かない足が、その前の足にもつれていく…
確かに、その足はもう、動いていなかったのです。
・・・・・
ふたりとも、無言でケースの前にすわりこみ、黙ってかぶこを見ていました。
明らかに、かぶこの命は尽きようとしていました。
それを感じて、動けなかったのです…

早朝、起きていちばんにケースをのぞくと、かぶこがひっくりかえっていました。
「あっ・・・」
カブトムシはみんな、仰向けに引っくりかえって死んでいる、というお隣さんの経験談を聞いていたので、
あわてて枝を持たせてみたら、足を動かして、かろうじてつかまってきました。
「まだ生きてる・・・」
仰向けは嫌いなはずだから、もとに戻してあげなくちゃ・・・と必死でえさ台の上に乗せてやる。
えさのゼリーに口をつけるも、、、食べているようなようすではなくて。
自分の体を、支えるのに必死の様相なのです。
しばらくして、出勤前のオットーがケースをのぞき、「ひっくりかえってる!」と。
台から落ちて、またも仰向けになっているかぶこ・・・
かわいそうで、また元の格好に戻してあげたのですが、どうもようすがおかしい。
いちばん後ろの足はもう、右だけでなく左も空を蹴るように上を向いている。
動く足と、動かない足があり、動く足で立ち上がろうともがくのだけれど、
動かない足が体重を支えきれず、仰向けに転んでしまうということがわかってきました。
そうか・・・誰も見ていなかったら、その格好のまま、力尽きていくのかもしれない・・・
それはかわいそうだと思ったわたしは、家族みんなを送り出したあと、
飼育ケースをリビングに置き、かぶこをずっと見守っていました。
相変わらずかぶこは、動く右足を駆使して、必死で朽ち木につかまろうと、のぼろうと上を目指している。
そのたびに、動かない左側へと体を傾け、ついにひっくりかえってしまう・・・
それを放っておけずに、ひっくりかえるたびに、うつぶせに戻してやっていました。
・・・・・
そのうち、後ろの両側4本の足がまったく動かなくなり、左右のいちばん前の足のみを動かして、
もがくようになりました。
そうなると、仰向けに転ぶこともなくなって・・・用事の合間にケースをのぞくと、
じっとしていながら、時折、左右の2本の足を動かしているのが見えました。
ああ、まだ頑張っている…とほっとしては、家事に戻っていたのです。
昼頃、本を読んで30分ほどうとうとして、ケースをのぞきにいくと、かぶこがじっとしている。
しばらくながめていたけれど、動かないので、ふたを開けて、さわってみた。
もう、かぶこは自力で動きませんでした。
手足を広げたまんま。
午後1時ごろでした。
嫌いな仰向けで力尽きたのでなくて、よかっただろうか。
後ろ足から徐々に自由がきかなくなり、動かなくなり、最後にこと切れる・・・
その不思議な死のかたちに打たれ、命ってなんだろう、死ってなんだろう、
かぶこはどんな気持ちで死んでいったのだろう、今も、体は動かないけれど、気持ちはあるのかしら…
などなど、いろんなことを考えていました。

それでも・・・
クワタンの死のショックから覚悟ができていたこともあっただろうし、
何より、突然でなかったので、お世話の途中で覚悟ができた、ということもあった。
クワタンの時よりは、かぶこの死に際して、できるだけの手を尽くした、という充足感があった。
掘りやすいように、固くなった土はほぐしてやったし、登れないえさ台は、埋めて低くしてやった。
嫌いな仰向けにならないよう、転んだらすぐにもとの体勢に戻してやった。
本当のかぶこの気持ちは、どうだったか分からないけれど、お母さんは、できるだけのことをやったよ。
「ありがとうね、かぶこ」
そうつぶやいたら、涙がこぼれた。
胸の中にぽっかりと喪失感はあるけれど、無暗やたらに、落ちこむ気分にはならなかった。
「ありがとう、かぶこ」
我が家の暑い暑い夏が、今日、終わりました。